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【分析】フィリピンの騎手はなぜ「実力主義」で見るべきか — 5ペソの馬曳きから這い上がる騎乗市場
Cecilフィリピンの騎手層が厚いのは、その多くが馬曳きや厩務作業から這い上がった叩き上げで、最後は勝率という数字で実力を競うからだ。
2024年には John Alvin Guce が479騎乗で120勝を挙げて勝率25.05%を記録したが、5ペソの馬曳きから始めた騎手でも、勝てば数字で評価されて序列を上げていく。
出走頭数が少ないこの市場では騎手の腕がレース結果を大きく左右するため、日本の競馬ファンが慣れた「騎手で買う」という見方がそのまま使える。
フィリピンのトップ騎手は誰か?
2024年シーズンの数字を見ると、John Alvin Guce と Jeff Zarate の二人が抜けていて、育ちは対照的だが、どちらも勝率の高さで頂点に並んだ。
| 騎手 | 2024年の主な実績(一次情報) | 出所 |
|---|---|---|
| John Alvin Guce(“El Supremo”) | 479騎乗で120勝・勝率25.05%・連対率以上で56.78%が3着以内・4度目の賞金王(PHP 3.3M)・Philracom 殿堂入り | PJC #20 |
| Jeff Zarate(“The Cups King”) | PHILTOBO 2024 チャンピオン・重賞15勝・55勝/181騎乗・勝率30.3%・3着内率72% | PJC #29 |
(出所: Born To Ride - John Alvin Guce / Jeffril Zarate – The Cups King)
Guce の勝率25.05%は約4回に1回勝つ計算で、Zarate も181騎乗から55勝、勝率30.3%と、3頭に1頭近くを勝たせている。
比較の参考に挙がるのが、世界トップ級の騎手の勝率だ。
豪州の名手 James McDonald は2023/24シーズンに491騎乗で120勝、勝率24.44%を記録している。
香港のチャンピオン Zac Purton は同地で7度の年間王者に輝いた名手で、通算の勝率はおよそ17%にとどまるが、これは騎乗数が桁違いに多いことの裏返しでもある。
母数も競争レベルも国ごとに違うので単純には比べられないが、フィリピンのトップ層が30%前後という高い勝率を出している点は押さえておきたい。
(McDonald の数値出所: Racing Australia Fact Book 2024 / Purton の通算成績: Zac Purton reaches 1,700 Hong Kong wins milestone(HKJC))
フィリピンの騎手はどう生まれるのか?
フィリピンの騎手には、競馬一家で技を受け継ぐ世襲組と、馬曳きや厩務から這い上がる叩き上げ組がいるが、どちらの育ちでも、最後は勝率という数字で序列が決まる。
世襲組も最後は勝率という数字で序列が決まる。
世襲の代表が John Alvin Guce で、祖父 Eulogio Guce は成功した騎手、その息子が「Super Jockey」と呼ばれた名手 “El Maestro” こと Jesus C Guce にあたる。
Guce 家は5人もの騎手を出し、兄弟は豪州(Kembla Grange / Goulburn)や日本でも騎乗しているといい、Guce 自身も17歳で騎乗を始め、19歳で名伯楽 Jun Paman のもとで見習いに入るとデビュー2戦をいずれも勝った。
ここまでなら、競馬一家に生まれた騎手が順当に成功した話に見える。
叩き上げ組を見ると印象は変わる。
競馬と何の縁もない家に生まれた Jeff Zarate は、両親が離婚して祖母に育てられ、9歳から San Lazaro の厩舎に出入りして、馬を1頭曳いて5〜10ペソを稼ぐのが「最初の仕事」だったと本人が語っている。
高校卒業後はボロ自転車で San Lazaro から Santa Ana のジョッキー・アカデミーまで毎日通い、雨の日もバス代を惜しんで漕ぎ続けたという。
- Zarate は「犠牲を払わなければ成功はない(No sacrifice, no success)」と語る
- 似た経歴の騎手は他にもいる。PJC によると、Mark Alvarez(“The Black Superman”)はマニラの不良少年グループから足を洗い、通算1500勝近く・Presidential Gold Cup 制覇まで上り詰めたとされる
- 若手の Pabz Cabalejo は、地方の競馬場の平日のクラス5競走での騎乗ぶりだけで「次代のスター候補」として記事に取り上げられた。騎乗技術そのものが評価されている
世襲組も叩き上げ組も最後は同じ勝率という物差しで評価され、Guce 家のような系譜も、勝率25%という数字があって初めて「殿堂入り」という評価につながった。
生まれや乗る馬に恵まれなくても勝てば数字で這い上がれるので、騎手層が厚くなる。
John Alvin Guce は何がすごいのか?
Guce がすごいのは勝ち星の多さだけではなく、評価の低かった馬を勝ち馬に育て上げた点に、騎手の腕が結果を動かすこの市場の特徴がよく表れている。
そのキャリアで欠かせないのが Sepfourteen という馬で、2015年のセリでは「地味で小柄」と見られて PHP 60万のリザーブ価格にも届かず、オーナー自ら「みにくいアヒルの子(The Ugly Duckling)」と呼んだほど評価が低かった。
ところが2歳時に4戦4勝を挙げて三冠と Presidential Gold Cup を制し、Philracom のデータベースでは通算14勝を記録しているが、その全勝利で手綱を取ったのが Guce だった。
日本でも「人気薄の馬を上位に持ってくる騎手」は買い目の妙味として重視されるが、出走頭数が少なく有力馬とトップ騎手の組み合わせが結果を独占しやすいフィリピンでは、その効きがさらに大きくなる。
Guce は三冠レースを11勝、Presidential Gold Cup を3勝と、最高峰のレースを集中的に勝っている。
日本のファンはどう騎手を見ればいいか?
「リーディング上位騎手を軸にする」「勝率・連対率で買う」という日本でお馴染みの手法は、出走頭数の少ないフィリピンほど強く効くので、普段使っている見方をそのまま当てはめられる。
| 日本での見方 | フィリピンでの効きやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| リーディング上位騎手を軸にする | より効く | トップに有力馬の騎乗が集中し、結果が偏りやすい |
| 勝率・連対率で買う | より効く | Guce 25%・Zarate 30.3%と、上位の数字が高く差が明瞭 |
| 「この騎手はこの条件で強い」を読む | 効く | 同じ騎手が同じ大レースを繰り返し勝つため傾向が見える |
「勝率が高い」とは単に運がいいということではなく、有力馬の騎乗依頼が集まっている証拠であり、その機会を勝ちに変える技術の裏づけでもある。
Zarate の3着内率72%は勝てなくても崩れにくいことを示しており、連軸として信頼できる。
日本のファンが使う「鞍上で買う」感覚は、出走頭数が少なく騎手の影響が濃いフィリピンでこそ強く効く。
ひとつ注意したい点もあり、フィリピンの番組は出走頭数が少ない条件戦が多く、頭数が少ないほど1頭あたりの勝つ確率は上がりやすいので、数字を読むときは母数と条件のレベルもあわせて見ておきたい。
新競馬場は騎手に何をもたらすか?
新拠点のパドレガルシア新競馬場(The Horsemen’s Track)は騎乗機会と賞金の規模を広げるとみられるが、騎手の人数の少なさや国際経験の不足といった弱点までは、すぐには解消しない。
Guce はインタビューで「新しい競馬クラブの開場が楽しみで、若手の指導も続けたい」と語り、Zarate も現役を続けながら大レースを勝ち続けている。
新しい競馬場ができればまず騎乗機会と賞金が増え、ベテランから若手へ技術を伝える場にもなり、レース数が増えるほど叩き上げが乗れる機会も増える。
ただし、限界も冷静に見ておきたい。
- 人数の少なさ: トップは国際水準でも、その下の層は日本に比べて薄いとみられる
- 国際経験の不足: Zarate のクウェート・サウジ遠征のような例はあるが、海外で常時走る機会はまだ限られる
- 担い手の狭さ: PJC によれば、150年を超える歴史で免許を持った女性騎手はこれまで1名のみとされ、騎手を目指せる人の幅はまだ狭い
実力主義のもとでは勝てば数字で這い上がれるが、その反面、そもそも騎手を目指せる人数が限られている。
新しい競馬場がこの担い手をどこまで増やせるかが、騎手層をさらに厚くできるかどうかの分かれ目になる。
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まとめ
フィリピンの騎手は、競馬一家で技を受け継ぐ世襲組と馬曳きから這い上がる叩き上げ組が混じり合っているが、最後は勝率という数字で序列が決まる。
Guce の25%、Zarate の30.3%という勝率は、騎手がレース結果を大きく動かすこの市場の特徴をよく表しており、だからこそ日本のファンが慣れ親しんだ「鞍上で買う」見方がそのまま、むしろ強く効く。
本サイトは、トップ騎手たちを一次情報とデータの両面から、日本競馬の視点で順番に掘り下げていく。
よくある質問
フィリピンのトップ騎手は誰?
2024年シーズンの指標では、479騎乗で120勝・勝率25.05%を記録した John Alvin Guce("El Supremo")と、PHILTOBO 2024 チャンピオンで重賞15勝・勝率30.3%の Jeff Zarate が突出しています。
フィリピンの騎手はどんな出自が多い?
競馬一家で技が世襲されるケースと、幼少期の馬曳きや厩務作業から這い上がる叩き上げの両方が目立ちます。共通するのは、出自にかかわらず勝率という数字で序列が決まる実力主義の構造です。
日本のファンはフィリピンの騎手をどう見ればいい?
「リーディング上位騎手を軸にする」「勝率・連対率で買う」という日本でお馴染みの手法がそのまま効きます。出走頭数が薄い市場ほど、騎手個人の力量がレース結果を左右する度合いが大きくなるためです。
フィリピンの騎手はなぜ勝率が高いのか?
トップ騎手に有力馬の騎乗依頼が集中するためです。勝率の高さは、騎乗機会の集中と、それを勝ちに変える技術の両方を映した指標といえます。
フィリピンの騎手層に弱点はある?
層の絶対数の薄さ、国際レースでの経験不足、そして現役の女性騎手がほぼいないとされる裾野の狭さが挙げられます。実力主義は強い反面、入口の門が限られている点は留意が必要です。