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【血統解剖】USIR は本領発揮へ — 祖母は NZ の女傑 Seachange、米三冠馬アメリカンファラオ産駒が フィリピンで開花した

USIR(ユシル)は米国三冠馬 American Pharoah を父に、ニュージーランドの女傑 Seachange を祖母に持つ良血馬。豪州の名門 Lindsay Park で4戦未勝利に終わり「より層の薄い競馬圏でなら勝てる」と見込まれて AUD3万2,500で フィリピンへ渡ると、17戦5勝(複勝率約7割)・公式レーティング72へと一気に開花した。血統・豪州時代・現地での飛躍を、一次資料で前向きに読み解く。

USIR(ユシル)は、いま本領を発揮しつつある良血の上り馬だ。
父は2015年の米国三冠馬 American Pharoah、そして2代母(祖母)はニュージーランドの女傑 Seachange という、血統表だけで唸らされる一頭である。
その良血が、豪州の名門 Lindsay Park では3歳時に4戦未勝利。だが「より層の薄い競馬圏でなら勝てる」と見込まれてフィリピンへ渡ると、デビュー戦から勝ち上がり、17戦5勝(複勝率約7割)・公式レーティング72へと一気に開花した。
1200m・1400m・1600m のいずれでも勝ち鞍を持つ距離万能型で、まさに祖母 Seachange 譲りの資質がフィリピンで花開いた格好だ。
米国クラシックの血と、タフで万能なニュージーランドの女傑の血。その二つが結実した、これからが楽しみな一頭である。

USIR の血統 — 祖母は NZ の女傑 Seachange

USIR の最大の魅力は、何といってもその血統だ。
2021年10月25日生まれの鹿毛の牡馬で、ニュージーランドの名門 The Oaks Stud が生産した。

  • 父 American Pharoah(USA): 2015年に Affirmed 以来37年ぶりとなる米国三冠(Kentucky Derby・Preakness・Belmont)を達成し、同年の Breeders’ Cup Classic も制した歴史的名馬。種牡馬としても2019年に米国・カナダのリーディングファーストシーズンサイアーに輝き、55頭のステークスウィナーを輩出。豪州でも Victoria Derby(G1)馬 Riff Rocket を出すなど、南半球でも結果を残している。USIR はその南半球産駒だ。
  • 母 Away Cruising(AUS): NZ の名種牡馬 Darci Brahma を父に持つ豪州産の繁殖牝馬で、現役時代は1400m・1600mで2勝。
  • 2代母 Seachange(NZ): USIR の祖母にあたるのが、この女傑だ。2006-07・2007-08シーズンの NZ年度代表馬、2007-08の最優秀短距離馬で、1200〜1600mで通算14勝、Group 1 を7勝した名牝(NZ 1000ギニー、Telegraph H. ほか)。獲得賞金は NZ$124万+A$29.9万など。
  • 生産者 The Oaks Stud(NZ): その Seachange を生産・所有した、ケンブリッジの名門スタッド。

つまり USIR は、自牧場の至宝 Seachange を起点とする牝系から、米三冠馬を配して生まれた配合馬なのだ。

近親にも大物がいる。
USIR の母 Away Cruising は、豪州で A$354万超を稼ぎ Golden Slipper(G1)で3着した快速馬 Storm Boy の母 Pelican の半姉妹。
つまり USIR は Storm Boy の近親(いとこ関係)にあたる。
祖母 Seachange の牝系からは、ほかにも Divan(豪州で3勝)や Antrim Coast(Alister Clark S.・G2)などの活躍馬が出ており、底力のある一族だ。

豪州時代 — 名門 Lindsay Park で4戦未勝利、「層の薄い競馬圏で」と送り出された

これだけの良血ながら、USIR は豪州ではまだ結果を出せていなかった。
ここが Lucency にも通じる、この馬を理解するうえで重要な点だ。

USIR は2023年の Karaka イヤリングセール(NZB Book 1)で、生産者 The Oaks Stud から豪州の名門 Lindsay Park Racing が NZD7万 で購入した。
管理したのは Ben, Will & Jd Hayes 厩舎。豪州のトップステーブルだ。
だが3歳時(2024-25シーズン)の戦績は、4戦して未勝利だった。

日付競馬場レース距離着順斤量
2024-11-03Morningtonメイデン1500m8着/1158.0kg
2024-11-19Bairnsdaleメイデン1600m4着/1458.0kg
2024-12-07Wangarattaメイデン2000m4着/1058.0kg
2024-12-23Wangarattaメイデン1590m3着/1458.0kg

最高着順は最後の3着で、獲得賞金は4戦で AUD5,025。
層の厚い豪州のメイデン(未勝利戦)では、なかなか勝ち切れなかった。

そして2025年1月、USIR は Inglis のオンラインセール(Lot 101)に上場され、AUD3万2,500 で L Ann Decena 氏――フィリピンの馬主 Louise Ann B. Decena――が落札した。
注目すべきは、その出品時の売り文句だ。
出品者の Lindsay Park は USIR を「祖母が NZ年度代表馬 Seachange という良血」「ごく軽いキャリアで、4戦のうち掲示板を外したのは1度だけ」と紹介したうえで、こう書き添えている。

より層の薄い競馬圏(a weaker jurisdiction)でキャリアを伸ばす絶好の立場にあり、勝利は目前だと感じている。

良血だが豪州では勝てなかった馬を、「層の薄い競馬圏でなら勝てる」と見込んで送り出す――この構図は、米国の条件馬が現地で無敵になった Lucency とまったく同じだ。
そしてその見立ては、見事に的中することになる。

フィリピンでの飛躍 — 17戦5勝、複勝率約7割

フィリピンに渡った USIR は、売り文句どおり――いや、それ以上に走った。
PJC 公式データベースの集計(2026年6月27日時点)によれば、現地での通算成績は以下のとおりだ。

区分回数
出走17戦
1着5回
2着2回
3着5回
4着1回
着外4回

複勝圏(3着以内)は17戦中12回で、複勝率は約7割(70.6%)、勝率は約3割(29.4%)。
豪州では4戦未勝利だった馬が、2025年12月12日のデビュー戦(1400m)をいきなり勝ち、その後も安定して上位を確保し続けている。
勝ち鞍5つを並べると、その変貌ぶりがよく分かる。

日付競馬場距離着順走破時計斤量
2025-12-12PJC1400m1着1:2556.0kg
2026-01-04PJC1200m1着1:1154.0kg
2026-03-01PJC1400m1着1:23.8256.0kg
2026-04-08PJC1200m1着1:10.3756.0kg
2026-04-19MMTCI1600m1着1:38.458.0kg

賞金面でも飛躍は明確だ。
豪州での4戦の賞金が AUD5,025だったのに対し、2026年のフィリピンでの獲得賞金は 102万ペソ(2025年は3万7,500ペソ)。
環境が変われば、これだけの結果を出せる馬だった。

距離適性 — 1200mから1600mまで勝ち鞍

USIR は距離万能型だ。
1200m・1400m・1600m のいずれでも勝ち鞍を持っている。
それを象徴するのが、2026年4月の連勝だ。

  • 2026年4月8日: PJC の1200mを 1分10秒37 で勝利(56.0kg)。
  • 2026年4月19日: その11日後、MMTCI の1600m(14頭立て)を 1分38秒4 で勝利(58.0kg)。

短距離のスピードを要する1200mと、持続力を要する1600mを、わずか11日間で両方勝ち切る。
祖母 Seachange も1200〜1600mで14勝を挙げた万能の女傑であり、その距離万能性はまさに血の証といえる。

クラス・斤量・レーティングの推移

番組面でも、USIR は理想的なステップアップを描いてきた。

  • クラス: 2025年12月〜2026年1月は Class 4 を中心に走り、2026年2月以降は Class 3 に定着。下位条件から1クラス上へ確実に番組を上げた。
  • 斤量: 勝ち星を重ねた当初は53.5〜56kg台だったが、Class 3 定着後は58kgのトップハンデを背負う立場になっている。勝つほど重い斤量を課される、出世馬ならではの負担曲線だ。
  • レーティング: 現在の公式レーティングは 72.00(直前は69.00)と上昇基調。Class 3 の上位で堂々通用する水準にある。

下位条件から半年あまりでここまで番組を上げ、トップハンデでも崩れない――まさに上り調子の馬の典型だ。

現在地とこれから — ここからが面白い

直近のレースぶりは、USIR がいかに安定しているかを物語っている。
Class 3 で58kgのトップハンデを背負うようになってからも、掲示板を外さない走りを続けている。

日付競馬場距離着順走破時計斤量
2026-04-29MMTCI1400m6着/1401:25.658.0kg
2026-05-06PJC1200m2着/91:12.5658.0kg
2026-05-22PJC1200m3着/101:11.6958.0kg
2026-06-07PJC1650m2着/71:41.3258.0kg

最新の2026年6月7日(PJC・1650m・Class 3)では、勝ち馬 GENERATIVE にわずか0.75馬身差の2着に粘った(3着 FRUGALITY)。
重い斤量で相手も強くなる Class 3 で、それでも勝ち負けに加わり続ける勝負強さは、地力が現役世代の上位にあることの証だ。

豪州で「勝利は目前」と評された馬が、フィリピンで5勝を挙げ、いまや Class 3 のトップハンデ。
祖母 Seachange ゆずりの万能性と、父 American Pharoah という超一流の裏づけがある以上、さらにクラスを上げての活躍に十分期待できる。
レーティング72に到達したいまは、まさに「ここからが面白い」局面だ。

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まとめ

USIR は、米国三冠馬 American Pharoah を父に、NZ年度代表馬 Seachange を祖母に持ち、豪州の高額馬 Storm Boy の近親にもあたる超良血の牡馬だ。
名門 Lindsay Park で走った豪州では3歳4戦未勝利(最高3着)で、「より層の薄い競馬圏でなら勝てる」と見込まれて AUD3万2,500でフィリピンへ渡った。
その見立ては的中し、現地では17戦5勝(複勝圏12回=約7割)、Class 4 から Class 3 へ番組を上げ、公式レーティングは72.00、2026年の獲得賞金は102万ペソに達している。
1200〜1600mを苦にしない万能性は、祖母 Seachange ゆずりの資質そのものだ。
強い競馬圏で眠っていた良血が、環境を得てついに本領を発揮しはじめた USIR は、今後のクラス昇級と上位戦線での活躍が大いに楽しみな、要注目の一頭である。


Sources

よくある質問

USIR はどんな血統の馬ですか?

父は2015年の米国三冠馬 American Pharoah(USA)、母は Darci Brahma を父に持つ Away Cruising(AUS)です。2021年10月25日生まれの鹿毛の牡馬(フィリピンの馬齢計算で現5歳)で、ニュージーランドの名門 The Oaks Stud が生産しました。2代母(祖母)は NZ年度代表馬に2度輝いた女傑 Seachange で、豪州の高額馬 Storm Boy の近親にもあたる超良血です。(出所: William Inglis / Arion Pedigrees、PJC 公式馬データベース)

USIR は豪州ではどんな成績でしたか?

豪州では名門 Lindsay Park(Ben, Will & Jd Hayes 厩舎)で走り、3歳時に4戦して未勝利(最高3着が1回、獲得賞金 AUD5,025)でした。2023年の Karaka セールで The Oaks Stud が NZD7万で売却し、2025年1月の Inglis オンラインセールで AUD3万2,500で L Ann Decena 氏(フィリピンの馬主)が購入。出品時には「より層の薄い競馬圏でキャリアを伸ばす絶好の立場にあり、勝利は目前」と評されていました。(出所: William Inglis 2025 January Online Sale, Lot 101)

USIR のフィリピンでの戦績はどのくらい強いのですか?

PJC のデータによれば現地通算17戦5勝(2着2回・3着5回・4着1回)で、複勝圏(3着以内)は12回=約7割です。2025年12月のデビュー戦をいきなり勝ち、約半年で Class 4 から Class 3 へ番組を上げ、公式レーティングは72.00(直前69.00)まで上昇しました。(出所: PJC 公式馬データベース、2026年6月27日時点)

なぜニュージーランドの血が強みなのですか?

USIR の祖母 Seachange を生産・所有した The Oaks Stud は、ケンブリッジの名門牧場です。NZ産馬は丈夫さ・万能性・コストパフォーマンスで世界的に評価され、豪州ではメルボルンカップを43回(1882〜2019年)制し、近年は出走頭数の約5%でG1勝利の約23%を占めます。USIR が1200〜1600mを苦にしない万能性は、こうした NZ産らしい資質と重なります。(出所: NZ Thoroughbred Breeders' Association ほか)

USIR の調教師・馬主・主戦騎手は誰ですか?

フィリピンでの調教師は Renato D. Hipolito、馬主は Louise Ann B. Decena、主戦騎手は JB Hernandez です。豪州時代は Lindsay Park(Ben, Will & Jd Hayes)が管理していました。(出所: PJC 公式馬データベース / William Inglis)